78億円の巨費を投じた「野戦病院」
大阪府が新型コロナウイルスの感染拡大に対応するために設置した「野戦病院」、正式名称「大阪コロナ重症センター」は、約78億円の費用をかけながら、実際に入院した患者はわずか303人にとどまりました。この施設は、2021年に大阪市住之江区のインテックス大阪内に開設され、府内の医療逼迫を緩和するために設けられました。しかし、その効果は限定的であり、結果的に費用対効果の面で大きな批判を浴びることとなりました。
設置の経緯と当初の期待
大阪府の吉村洋文知事は、2021年の第4波、第5波のコロナ感染拡大時に、重症者向けの医療体制を強化する必要があると判断し、野戦病院の設置を決定しました。府内の医療機関ではすでに病床がひっ迫し、多くの患者が自宅療養を余儀なくされていたことから、この施設は医療崩壊を防ぐ切り札として期待されていました。
しかし、結果としてこの施設の活用は極めて限定的なものにとどまりました。その最大の理由は、医療スタッフの確保が困難であったことです。設置された病床数は100床でしたが、必要な看護師や医師の配置が十分に行えず、実際に稼働できた病床はごく一部でした。
なぜ失敗したのか?
- 医療人材の不足
施設を稼働させるためには多くの医療スタッフが必要でしたが、当時の医療現場ではすでに人手不足が深刻化しており、追加で人員を確保するのが困難でした。 - 設備投資に対する費用対効果の低さ
78億円という巨額の予算が投入されたにもかかわらず、施設の利用は限定的でした。医療機関の病床確保や在宅医療の支援に資金を振り向けたほうが、より多くの患者を救えた可能性があります。 - 施設の活用方法が不明確
開設当初から、どのような患者を受け入れるのか、どの程度の医療を提供できるのかといった基本的な指針が不明確でした。その結果、施設を活用できる場面が限られ、多くの病床が空いたままとなってしまいました。
吉村知事の「失敗」認定と今後の課題
2023年、吉村知事自身がこの「野戦病院」について「失敗だった」と認めました。これは、当時の大阪府の対応に大きな課題があったことを意味しています。特に、医療人材の確保や施設の計画的運用が十分に検討されないまま進められたことが、今回の問題の大きな要因となりました。
今後の課題として、
- 緊急時の医療体制を整備する際の人材確保の重要性
- 費用対効果を考慮した施策立案
- 既存の医療資源を最大限活用する戦略
などが挙げられます。
結論
大阪府が設置した「野戦病院」は、当初の期待とは裏腹に、運営の難しさと計画の甘さが露呈した事例となりました。緊急時の対応とはいえ、巨額の税金が投入された以上、その効果を最大化することが求められます。今後は、同じ過ちを繰り返さないために、医療人材の確保策や、緊急医療体制の計画的な整備が必要不可欠となるでしょう。
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