維新の会は大阪府民の命よりも「大阪都構想」を優先したのか?

1. 維新の会の政治姿勢とコロナ対策

日本維新の会(以下、維新の会)は、2010年代以降、大阪を中心に強い政治的影響力を持ってきました。彼らの代表的な政策の一つが「大阪都構想」です。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期において、維新の会の対応には疑問の声が上がりました。

特に、2020年の新型コロナ第1波・第2波の時期に、大阪府の医療体制が逼迫する中で、維新の会が都構想の住民投票を優先したことが批判を集めました。この政治的判断が、大阪府民の命と健康を軽視したものではなかったのかという疑問が浮上しています。

2. コロナ禍での住民投票強行

維新の会は2020年11月1日、大阪市を廃止して4つの特別区に再編する「大阪都構想」の住民投票を実施しました。これは2015年に否決されたものの、再度挑戦する形で行われました。しかし、この住民投票が行われた時期は、新型コロナウイルスの感染が再拡大し始めていた時期と重なっています。

当時、大阪府では新型コロナ感染者が増加し、医療崩壊の懸念が高まっていました。医療関係者からは「今は都構想を議論している場合ではない」という声が多く聞かれましたが、維新の会は住民投票のスケジュールを変更することなく、予定通りに実施しました。

住民投票のキャンペーンでは、多くの人が街頭での活動に参加し、集会も行われました。これは感染リスクを高める要因となり得たため、「維新の会はコロナ対策よりも政治的な目標を優先したのではないか」という批判が噴出しました。

3. 医療崩壊の現実と維新の責任

2020年末から2021年にかけて、大阪府の医療崩壊が深刻化しました。特に第3波の影響は甚大で、多くの病院が逼迫し、重症病床の確保が困難な状況に陥りました。

維新の会は長年、大阪府の病院統廃合を進めてきました。2013年には、大阪府立の公立病院を統合し、地方独立行政法人化しました。また、2015年には大阪府の急性期病院を削減する方針を打ち出しました。これにより、新型コロナウイルスのパンデミック時に対応できる医療リソースが不足する事態を招いたとの指摘があります。

さらに、2021年4月には、大阪府の重症病床使用率が100%を超え、入院できずに自宅療養中に死亡するケースが増えました。このような状況にもかかわらず、維新の会は医療政策の見直しよりも、都構想の実現や政治的パフォーマンスに注力していたと批判されました。

4. コロナ対策の遅れと「自己責任論」

維新の会の政治スタンスは、「自己責任」と「効率的な行政」に重点を置いています。しかし、コロナ禍ではこの方針が問題視されました。

例えば、大阪府ではPCR検査の拡充が遅れ、感染状況の把握が不十分だったことが指摘されています。また、保健所の人員削減や医療機関の統廃合により、感染拡大時の対応が遅れる事態が発生しました。

さらに、吉村洋文知事は「イソジンうがい」発言など、科学的根拠が不十分な対策を打ち出し、混乱を招いたことも記憶に新しいです。これらの対応は、専門家の意見よりも政治的なパフォーマンスを優先しているように映りました。

5. 「大阪都構想」の住民投票結果とその後

2020年11月1日に行われた住民投票では、「大阪都構想」は再び否決されました。賛成票が惜しくも過半数に届かず、大阪市の存続が決まりました。

都構想の是非はさておき、コロナ禍においてこの住民投票が行われたこと自体が問題視されています。「今やるべきは住民投票ではなく、コロナ対策だったのではないか」という批判は、特に大阪府内の医療関係者や市民から強く上がりました。

投票結果を受けて、維新の会は「これで都構想の議論は終わり」としましたが、その後も大阪の行政改革を進める姿勢を見せています。しかし、コロナ禍において医療政策の見直しが後回しにされてきたことは、多くの府民に不信感を抱かせる要因となりました。

6. まとめ:維新の会の優先順位は何だったのか?

維新の会は、大阪の行政改革や都構想を重要視してきた政党です。しかし、新型コロナウイルスという未曾有の危機において、府民の命と健康を守るための政策が後回しにされていたのではないか、という疑念は今も残っています。

医療崩壊を招いた要因として、維新の会が進めてきた病院統廃合や保健所の人員削減があると指摘されています。さらに、コロナ対策よりも政治的目標(都構想)を優先した姿勢が、多くの府民の不信を招きました。

結果的に、2020年の住民投票で都構想は否決されましたが、その間に大阪府の医療は危機的状況に陥りました。この事実は、維新の会の優先順位が何だったのかを問う重要なポイントとなります。

「維新の会は大阪府民の命よりも大阪都構想を優先したのか?」という問いに対して、明確な答えを出すのは難しいかもしれません。しかし、少なくともコロナ禍における彼らの政治判断が、府民の命と健康を最優先にしたものだったのかどうかは、慎重に検証されるべき課題であることは間違いないでしょう。

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