1. 事案の概要
日本維新の会の梅村みずほ議員が、新宿区の新型コロナウイルス感染者に対する10万円の給付金支給に関して、「わざと感染してラッキーという若者が出る可能性がある」とツイートし、物議を醸しました。この発言は、感染症対策のあり方や、給付金の制度設計についての議論を呼び起こしました。
新宿区が実施したこの給付金制度は、感染拡大により経済的な打撃を受けた人々への支援策の一環として導入されたものです。しかし、梅村議員の発言は、給付金が逆に「感染を助長する可能性がある」という視点からのものであり、多くの批判と議論を生む結果となりました。
2. 給付金とモラルハザードの問題
梅村議員の指摘した「わざと感染して給付金を得ようとする人が現れる可能性」は、いわゆるモラルハザードの問題と関連しています。モラルハザードとは、ある制度が導入されることによって、人々の行動が不適切な方向に誘導されるリスクを指します。
例えば、失業手当の制度があることで、一部の人が意図的に仕事を辞めて手当を受け取るケースが発生することがあるように、今回の給付金制度も「感染すれば金銭がもらえる」という仕組みになってしまうと、不正受給のリスクが高まる可能性があります。しかし、こうしたリスクを過度に強調することが、本来の支援の目的を損なう危険性もあります。
3. 政治家の発言と責任
政治家の発言は、特に公衆衛生のようなセンシティブな問題においては慎重さが求められます。梅村議員の発言は、単なる懸念の表明だった可能性もありますが、それが「感染を助長する若者がいる」という印象を与えてしまったことが問題視されました。
また、この発言が「若者=不正受給を企む」という偏見を助長する恐れがある点も指摘されています。コロナ禍においては、特に若者の行動が厳しく監視される傾向があり、このような発言がさらなる分断を生む可能性があるのです。
4. 給付金政策のあり方
そもそも、感染者に対する給付金制度はどのように設計すべきなのでしょうか。
感染者への経済的支援は必要ですが、同時に不正受給を防ぐための対策も求められます。たとえば、以下のような仕組みが考えられます。
- 所得制限を設ける:経済的に困窮している人を対象にし、全員が無条件で受け取れるわけではない仕組みにする。
- 医師の診断書を必須とする:単なる陽性判定だけでなく、診断書の提出を義務づけることで、不正を防ぐ。
- 段階的な支給:感染後すぐに全額を支給するのではなく、一定の経過を見ながら支給する。
こうした対策を講じることで、感染を助長するような誤解を避けつつ、支援を必要とする人に適切に給付金を届けることができるでしょう。
5. まとめ
梅村みずほ議員の「わざと感染して給付金を得ようとする若者が出る可能性がある」という発言は、モラルハザードの問題を提起したものの、言葉の選び方や表現の仕方が適切だったかどうかが問われています。
給付金政策は、不正受給のリスクを考慮しながらも、本当に支援が必要な人に行き渡るような仕組みを作ることが重要です。政治家は、こうした政策の課題を指摘する際には、国民の分断を招かないよう慎重な言葉選びが求められるでしょう。
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